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森星と行く、銀座・観世能楽堂。

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創業140周年を迎えるセイコーが、その創業の地とする銀座。伝統を大切にしながら新しい挑戦をすることで紡いできた街の歴史は、セイコーの歩みに重なるもの。そんな銀座の街に、グランドセイコーの「エレガンスコレクション」を着用した女性が降り立ち、その魅力に触れる連載企画。第1回のゲストは、森星。


炎の動きのように、風に揺らいだら軸に戻る。

銀座・中央通りに位置する複合商業施設GINZA SIX 。その地下3階に、二十五世観世左近記念 観世能楽堂がある。能の大成者 観阿弥、世阿弥父子から約 700 年の伝統を受け継ぐ観世流。その活動拠点として移築された神聖な総檜造りの舞台に、今回の出演者、森星さんが上がると、黒のパンツスーツで静寂の中に立つ姿に、演者の佇まいが感じられた。

能の舞台では主役の「シテ」が面をかけるが、変わるはずのない「能面」の表情からさまざまな感情が読み取れるのは、シテが見せる面のアングルや、観客の心情の投影によるものとされる。今回着用した腕時計のダイヤルカラーも、照明の光によって変化を見せた。「最初黒に見えていたものが、別の瞬間にはネイビーに見えたり、紫に見えたりするんです」。森さんが続ける。「人と一緒ですね。光の当て具合によって、いろんな側面が見えてくる。よく考えるんです。私は自分のどこに光を当てていきたいのかって」

最近は、日本の工芸の美しさや伝統文化の素晴らしさを再発見することも多いという星さん。国内を旅する中、能登では輪島塗りの職人と対談し、總持寺で初めて座禅を組んだ。「20分ぐらいの時間でしたが、壁に向かって座っていると、頭の中をいろんなことがよぎるんです。曹洞宗の座禅では、考えがよぎったら受け流す。炎の動きのように、風に揺らいだらまた軸に戻る。日常では、いろんな情報が入ってきて、ふっとどこかに消えちゃうかなと思うときもあるけれど、私の場合、家族に会うと軸に戻れる。特に祖母の存在は大きいです。自分に戻る軸があること、自分の中の軸を正してくれる誰かがいるというのは、とてもありがたいことだと思います」


ところで、今回着用した腕時計は「エレガンスコレクション」だが、星さんがエレガンスを考えるとき、頭に反射的に浮かぶのも、祖母の森英恵氏だ。「エレガンスというのは、決して形式ばったことではなく、他人に対しての思いやりで、それが振る舞い、話し方、相手への感謝、love となって表れる。女性がずっと追い求める美しさって、そこにあるんだと思います」。昨年水戸芸術館開館30周年記念事業として開催された「森英恵 世界にはばたく蝶」展も、日本ファッション界のパイオニアである祖母がやってきたことを知り、学ぶ良い機会となった。「祖母が作った服にはとても躍動感があって、マネキンが今にも動き出しそうな生きている感じがありました。私の知らない当時の祖母に、こんなにもパワフルなパッションがあったんだって、ドレスに宿ったエナジーを感じました」

自分も美しいものをクリエイトしたいという欲望が芽生え始めたという彼女。近頃は、モデルからクリエイティブ ディレクターへと活動の幅を広げている。「自分も祖母の持っていたようなパッションを持って作らないと、世代を超えて受け継がれる、愛されるプロダクツは作れないとも思っています」

そんな彼女に、新しいことにチャレンジするモチベーションは、どこから来るのか聞いてみた。「デビュー以降を振り返ってみても、私の場合、自分のアイデンティティよりも、ルーツの方がひとり歩きしてしまった。自分はいろんなファッションを楽しむのが好きなのに、ひとつの面しかフォーカスされないことに反骨精神のようなものが生まれて。もっといろんな自分を見せたい、いろんな角度から見てほしいという気 持ちがモチベーションに繋がっているんだと思います」。そしていつも通りの、明るく気負いのない様子で明言した。「一度きりの人生なのだから、カッコイイことをしたいですね!」